実家の二階にある部屋から、一階の玄関に向かって降りて行く途中、モヘヤでできた猫が近寄ってきて、僕の匂いを嗅ぎ始めた。何かの匂いを探していたらしい。しばらくは匂いの主が僕であることを疑っているのか、僕の匂いを楽しんでいるのか、スノッブがワインの香りをわざとらしく楽しむように、目を閉じて顎を上げ、首を振って恍惚としている。
我に返って匂いの主が僕であることを認めると、モヘヤ猫は頬を赤らめて去って行った。
居間に入ると、普通のサイズのゴキブリが動き回っていて、家族が総出で混乱していた。
ピストルで一発撃って、10メートル先の壁のところに居る奴を仕留めたが、兄が、
「弾の数が少ない。無駄遣いするな。」と、表情を変えずに言った。