レントゲン

尿意があるときの夢というのはもどかしい。
新しいガンの治療法が試せるというので、町のクリニックを訪れるが、尿意を感じてトイレを探し始める。
こういう時の夢は必ずと言って良いほど、トイレは見つからない。
彷徨い歩いた結果、誰かの病室に行き着いた。ベッドの脇から、こちらの方に、歯医者のレントゲンが真っすぐ向かってくる。
そいつをブリッジで避ける。その先は男子トイレに通じる道のはず、が、ブリッジからやっと立ち上がると、そこはトイレではなく、診察室であった。
診察室の床には、まるでご褒美のように、洋式トイレが埋まっていた。
蓋はなく、便座は閉まっていて、足を延ばせばなんとか座れるようにはなっている。
担当の医師から、その便座に尻を載せて仰向けに寝るように指示された。
僕は言われるがままに便座に尻を載せて仰向けに寝ると、床に埋まっているはずの便座がニョキニョキと天井に向かって伸び、したがって僕の体も天井近くまで持ち上げられて、鼻先10センチくらい手前のところで止まった。
「はい。終わりです。」と、レントゲン技師の声がして、天井がレントゲンになっていたのだと、その時点で認識した。
医師ではなく、レントゲン技師が胸部の写真を見ながら、「今日も異常なしですよー。」とか言うので、「なんでお前が判断するんだ?」と、また激しい尿意に襲われた。