深夜。そこは港で、大きな客船が一隻、停泊していた。
港の地面が急に、せりあがった。
そのせいで、その船が、地面に隠れて見えたり、また現れたりした。
と、思ったら、その大きな客船はさらに巨大に見えたりもした。
僕は不思議に思ってその船を眺めていると、先輩が、「こっちに向かってるんや、気をつけろ。水を被るぞ。」と忠告してくれた。
僕は、自分の履いている革靴が気になったので、水しぶきと水たまりから逃げた。
ありえないくらいの跳躍力で飛べた。
そして、家の壁面にあるプラスチックのパイプにしがみついたのだった。
僕は、革靴が再び気になった。そうこうしながらも、靴が濡れることを避けるように努力していた。
僕より先に、もうびしょ濡れになっていた同級生のKKが、今度は腹いせに、僕にシャワーを浴びせかけてきた。
どのような手段でか、ホースで水を引っ張ってきていたのだ。
僕が、「やめろ、今俺が来ているダウンジャケットは、防水ではない。」と言ったら、KKは水を浴びせかけてくるのをやめた。
そこから、ダンジョンに戻った。
僕は、革靴がうまく履けていなかったので、しっかりと履きなおそうとしたが、カカトのあてものがぶつかって、なかなかうまく履けなかった。
縁台の下の柱に寄り添うようにして、民芸品の靴ベラを見つけたので、それを利用して履きなおしたあと、その靴のカカトにいれるパーツをセットして、ようやくまともに履きなおすことができた。
いつのまにかダンジョンではなくなっていたのだが、またそのあとすぐにダンジョンに戻った。
なぜかドラクエのように3人で並んで歩いているのだった。
ダンジョンを抜けて自宅に戻った。
どうしても流したい曲があるのに、NFSには入っていなかったので、探しまくっていた。
そうこうしている間に、KDさんが、「ち〜まさん、僕車で来ているので、送ります。」と言ってくれたので、そういえば今、YNさん(今フランスでピアノの先生をしている美人の同級生)がリサイタルで日本に帰ってきているので、彼女と結婚しに行こうと思って家を出た。
しかし自分が家だと思っていたところは、実は自分の家ではなく、M先輩の家であると知って愕然とした。
M先輩は、家に親が帰って来ないので、自分の友達を好き勝手に泊めたりしていたのだ。
昔は仲の良くなかった同級生のKKと、すごくくだらない話ししていた。
良く知らないおっさんが、呪いのようなナゾナゾを話し始めた。
その瞬間、KKがおっさんの後ろから首根っこをつかみ始めた。KKナイス。ナイスKK。
僕もおっさんの前から右手で首を締めつつ、左手でタマキンをつかんで、階段の下までおっさんを引きずり降ろした。
おっさんはしつこくナゾナゾのつづきをブツブツと話していた。
「聞き終わって答えられなかったら殺される。」と直感した。
僕は恐怖のあまり、おっさんのタマキンをつかんだまま、そいつの頭をガンガンと壁に打ち付けながら、半泣きで震えた声で、
「滑舌悪いねんオッサン!」「何しゃべってるかわからんのじゃ!」と叫んでいた。
モンスターをやっつけた!
なぜかドラクエ風味に戻っていた。
いつのまにか父母の住む実家にいた。親戚のリカちゃんが夫婦で遊びに来ていた。
ドラクエ代は父が全て収めたため、リカちゃんは小銭を自分の信玄袋に戻した。
母が、「この子、小銭貯めて、ファミコンのソフト買うてんのえ。私もこないだ、100万円玉と、150万円玉、あげたんえ。」と言いながら、相当な量の100円玉を戸棚から出して、引き出しに入れなおした。
父が、母に、「ごめん、振替伝票の金額間違えた。\58,000て書いたけど、ホンマは\57,800やった。」と謝りながら、そのまま金額だけを上書きしてしまった。
僕は、振替伝票をもう一枚切って訂正しないといけないと指摘した。
テレビから、ドビュッシーの『グラナダの夕暮れ』が流れてきたので、ふと画面に目をやると、大沢たかお風の男が主役(どうやらカメラマン役)で、ヨーロッパの古い街を撮影していた。
その街は、全体が胸の高さくらいまで、澄んだ透明の水に浸かってしまっていた。そういう設計の街なのか、災害でそうなってしまったのかは分からない。
街の道路や建物のあらゆるところに、ミケランジェロのような力強い絵画や彫刻が施されていて、どこかの一画に、有名な美人画が水没している場所があった。
大沢たかお風のその俳優が、「やっと会えた…。長かった…。」などとわざとらしく、斜めのアングルで呟いていた。
たかお風は、カメラの長い一丸レフの先を水の中につけ、そのまま自分の頭も水の中に沈めて写真を撮っていた。
僕は、「へー、そんなカメラもあんのか…。」と白けつつも感心しながら、「まあでも、こんな美しい街があるのなら、行ってみたいかもな…。」と、本気で思った。
頭の中で、『グラナダの夕暮れ』のリズムがずっとループしている。
♪ターンタタンタタ ターンタタンタタ ターンタタンタタ …意識が次第に遠のいていった。