昼寝

とある新橋のホテルで同級生のMHちゃんとMKさんと食事の約束をしていた。
三人でレストランに入ると、別館に案内された。
1万そこそこのコースで予約していたので、なんで本館じゃないのかなと疑問に思いながら、テーブルについた。
僕がお誕生日席に座った。その背後には80インチくらいの巨大なモニタがあって、音がうるさかった。
二人がお酒を注文する前にお手洗いに行ったので、しばらく一人で待っていた。
僕もおしっこがしたかったのだが、先に行かれてしまったので、どちらかが戻ってくるのを待つしかなかった。
MHちゃんが先に帰ってきた。
トイレ用のスリッパかなと思って履いた草履が実はMHちゃんのもので、「それあたしの」と注意された。
仕方なく自分の靴を履いてレストランの外に出た。
紳士用のトイレは一つしかなく、もうすでに先客がいて、さらに一人並んでいたので、本館のほうに向かった。
本館への渡り廊下は屋外で、中庭を見下ろす造りになっていた。
本館に入ろうとしたとき、群衆が雪崩のように飛び出してきて、渡り廊下のほうへ押し戻された。
「空襲?」、「えっ空襲って?」、「なんだよ空襲って?」みたいな叫び声が幾重にも重なりあって聞こえた。
僕はMHちゃんとMKさんが心配になったので、別館のほうへ走って戻った。
だが、どう間違えたのか、別の店に入ってしまった。ちょっとリッチな居酒屋のような感じの店だ。
僕は空襲のことより、やはり一人一万以上するコースを予約して、ちょっと格落ちする別館に案内されたことが気になっていた。
ただ、今はそんなことはどうでもいい。
元の店に戻るため、いったん屋外にでようとした。
クマのような体をした顔の濃いオッサンが、僕を羽交い絞めにして、外に出すのを妨害した。
おそらく、外は危険ということだろう。
「離せオッサン!」と強く言うと、力が弱まった。
しかし、僕の肩やら胸板やら尻やらを、やたらさわさわしてくるので、振り払って逃げた。
屋外に出ると、やはり一葉に皆「空襲、空襲」言っている。
が、街の人たちは以外に落ち着いて行動していた。ミサイルは新橋には落ちてこないだろうと高を括っているのだろう。
早くMHちゃんとMKさんを見つけないと、と思った僕は、熊のいる店内に戻ろうとした。
そのとき。
空からトンボ花火のような爆弾がいくつも落ちてきた。
各辺2センチ程度の白い立方体に、黒い羽子板の羽のようなものが、4~5枚付いている。
それは地面に落ちても、すぐには爆発しなかった。
「時差タイプのやつや」と直感したので、やはり急いで店の中に戻ろうとした。
若い男性の歩行者が、そうとは知らずに立方体を踏もうとしたので、「それ爆弾。」と注意した。
彼は慌ててそれを避けたが、立方体が強く点滅して、飛び上がって羽が回転して追いかけてきた。
「しまった。追尾タイプだった。」
レストランとは反対の方向へ、必死で逃げた。
しばらく逃げて空襲が止むと、皆普通に歩きだしていたので、僕もレストランに戻った。
レストランのドアを開けようとしたとき、ひょろっとしたアノニマスのような顔をしたサラリーマン風の男性が僕の腕をつかんで妨害するので、それを振り払って中に入った。