出戻り就職

仕事仲間のM氏と、前居た会社に戻っていた。
会社の執務室が、小学校の教室そのものになっていて、そこで机を向い合せにしてキーボードを打っている。
社長が入って来て、教壇に立って教師のように振る舞っている。
別の社員が遅れて教室(執務室)に入ってきた。
社長(教師)は遅れて入ってきた社員に向かって、嫌味たっぷりに、静かな声で、「余裕ですね。」と言った。
僕は、僕が随分過去に捨てた、自分自身の嫌な部分をたっぷり持っている、この男(社長=教師)が嫌いだった。言動のひとつひとつが、傍から見ていて恥ずかしかった。
知らないうちに出戻り就職していることに気づいて、「あれ?俺、給料いくらでこの会社に戻ったのかな?」と思った。

ノアの洪水

関西弁の宇宙人が、逆らう人類に対して、洪水を起こして懲罰した。
「お前らそんなん言うにゃったら、今からいたい目ぇ見せたるで。」
鉄骨で頑丈に構築された立体駐車場に、ものすごい勢いで水が浸入してくる。
日本語はすごく上手いが、すごく感じの悪い外国人のオバハンが運転する車で水から逃げ回って、安全なところにたどり着いたが、そこは実家だった。
母に、「あんた食べ過ぎやで。」と言われた。
場面はいきなり転換し、地方の安いビジネスホテルの玄関ホールのようなところで、アルミの金タワシに全裸でくるまって寝ていた。
寝苦しかったので、ふと見ると、腹のうえに同級生でチェリストのG君と、顔は見えないがすごく綺麗な女性が座っていた。G君が、「僕たちこれから結婚するんだ。」と言った。
眠たかったので、祝福の言葉もかけずに「お好きにどうぞ。」と言ってまた寝た。
しばらくして起きたら、ホテルの外に金タワシに簀巻きにされたまま、放り出されていた。

10連符

実世界で10連符などというものは滅多に使われない。
使ったとしても、聴き分けられる人というのはまず居ないはずだし、聴き分けられたとしても単なる連打と何が違うの?という反応が返ってくるのがフツウである。
【夢】
ドラムのH氏とライブをしていた。どういうわけか、僕もドラムを演奏している。
手でやるような複雑なリズムを両足で(つまりバスドラムとハイハットで)演奏し、両手でクラッシュシンバルを叩いたら(10連符)、お客さん達がそれを聴き分けて、会場が拍手喝采で包まれた。

リウゼツラン

父母が瀬戸内海の小島に遊びに来ている。

高さ1m、幅30cmほどの水牛の角に、コバルト色のリウゼツランの花が寄生して咲いている。角と花との境目のグラデーションがこの世のものとは思えない美しさである。

いつの間にか、だだっ広いガレージのようなところに移動していた。柵の向こう側の方に、リウゼツランの花と同じ色のコバルト色の強い光があったので、吸い寄せらえるように近づいて行った。光源のあたりはビルの非常口のようになっていて、中世のヨーロッパのような服を着た、白人の少年ひとりと数人の男が居た。

少年が、半ば無理やり非常口に押し込まれようとしたので、それを止めに入ろうとすると、男のうちの一人が静止した。何語だか分からない言語で、「お前たちはダメだ」と言われた。その男はスウォード(長剣)を持ち出してきて、細かく三回、僕の顔を切り裂くジェスチュアをして脅かしてきた。何かの儀式のように、文字を書かれたようでもあった。目の前で鋭い刃物で脅かされたので、少年を追いかけるのをあきらめて立ち去ろうとすると、もときた場所が、ガレージではなく墓場になっていた。

後ろから追いかけてくる白人の一人から、白いピカピカした小さな手のひらに収まるピストルを預かった。

気紛れに、だれかを撃とうともしてみたが、あまりに綺麗なピストルだったので、ポケットに隠した。

5歳くらいの少年が「このままでは捕まるから」と言って先導してくるので、仕方がないからついて行った。

墓場までくると白人の男が追いかけてきたのが分かった。

少年が「こっち」といってマンホールの蓋を開けて降りて行った。足から入るとズブズブと泥の中に沈んで行って、胸から上だけが出た状態になってしまった。

泥の中に居て、さらに沈むことも、上に逃れることもできなくなってしまった。

ふと、先に入った少年はどこへ消えたのだろうと思った。

葬式

誰か知らない知り合いの葬式に参列した。
キリスト教系の葬式だったと思う。
チャペルの前から二番目の、右端に座っている人(男か女か、年齢も定かではない)が、号泣している。その人の、左手首には黒い大粒のオニキスの数珠が、鈍く光っている。
なんだか自分も悲しくなってきて、背中を丸めて泣きはじめると、背中をつついてくる人がいた。振り返ると、中学時代の担任だった。生物の授業で山本宣治の性教育をトレースしていた、変り者のおっさんだ。
目が合うなり、「背筋を伸ばせ」と低い声で言ってきた。
こちらももう良い大人なので、つついてきた指をはたいて睨みつけたが、そのせいで悲しみは白けてしまった。
そもそも誰が死んだのか、いつどんな死に方をしたのかが全然わからないのに、何で悲しんでいたのか、とても不思議になった。
葬儀の後、四方の壁がコンクリート打ちっぱなしの部屋があり、それを通り抜けなければ外にでられないということが分かった。その部屋の中では人工的に雷を作りだしていて、天井から周期的にバチバチと雷が落ちていた。
難儀してその部屋からチャペルの屋外の階段のところまで出たが、通り抜けるときに、少し右手がビリっとした。

階段の上から3番目くらいの段のところに腰かけていると、親戚のA君と先輩のKさんが二人で揃ってこちらに話かけてきた(二人の面識は無い筈である)。
「校内で小規模な展覧会をやっているはずなのでチケットを入手してほしい。」とのことだった。
事務のおねーちゃんに携帯で電話をした。その携帯のプッシュボタンの代わりに、サボテンに数字が印字してあって、それを痛みをこらえて一つずつ押した。
押すたびにその数字のところが光った。
ほどなく電話がつながった。その事務のおねーちゃんから受話器越しにあれこれ聞き出そうとしたが、なかなかはなしがかみ合わないので、埒があかないからと言って、事務所からおねーちゃんが二人出てきた。二人ともそこそこブサイクだったが、人としては感じが良さそうだった。
わざわざ出てきてくれたので、「そこの事務所にいっこく堂が来てるよ。」と教えてあげた。
ブス二人はおそるおそる事務所のドアを開けた。
開いたドアの向こうに、いっこく堂と、人形ではなく、人形の代わりにおっさんが一人いた。
いっこく堂がしゃべり始めると、人形の代わりのおっさんが時差でしゃべりはじめた。「これは新しい!」と、その場にいた一同の喝采を浴びていた。